こんにちはティカールです。
住宅会社最大手で8年間営業としての経験を積み、スーパーゼネコンの営業職へ転職。数年後に独立し不動産業をスタート。平成20年より会社経営。現在、Fireを達成。毎年数件ずつ収益物件を買い進めている。
こんにちは!ティカールです。前回は、
- 歴史から見る日本を含むアジアの高温多湿な地域での屋根形状
- 雨こそ家を傷める最大の原因
を解説しました。今回は全5つの内、残りの3つを解説します。丁寧にわかりやすく解説するので最後までご覧ください。
この記事でわかること 3つ
- 軒の出が家の耐久性を増強させるポイント
- 流行(はやり)の屋根に要注意
- 家の建築費より大切なのはライフサイクルコスト
「軒の出」が家の耐久性を増強させるポイント
なんとなく、屋根の形状が大事なのはわかったよ。ところで…「軒の出」と言われても何のことかよくわからないんだ。軒(のき)って何だっけ?
軒(のき)とは、建物から出た屋根の先の部分だよ!
この軒の下を「軒下」と言って、昔は洗濯物を干したり農作物を乾燥させたりして使っていたんだ。
僕が小さい時に飼っていた犬は軒下に、犬の家(ハウス)を置いていたよ。日本の生活には不可欠だったのが軒だったんだ。
私は実家の犬走にいつも通学自転車を、母は家の北側の軒下に漬物たるを置いていたよ。軒があると物を置けて本当に便利よ!
オクさんは、軒の恩恵を受けて生活をされてましたね。(^^)
家を建てた後、「ああすればよかった、こうすれば、良かった。」と思うことがあります。
その中でも、僕がお客様からかなり多く言われた言葉があります。それは「軒があればよかった…。」でした。
僕も住宅会社時代に、いろいろな家を販売していたので…。
それって、クレーム…?
クレーム…というより、生活してから、気が付くことが結構多いんですね。家づくりって。どうしても図面上や展示場・実例見学会でイメージを掴んでも、実際に住んでから気が付くことってあるんです。
ここで、私の独自調査による「軒があればよかった。」とお客様が思った瞬間ベスト5(調査:わたし調べ)を発表します!
知りたい、知りたい!!
- 窓を開けていたら急な雨が室内に吹き込んで濡れた。
- 三輪車や自転車を置くスペースがない(子供が生まれてから)
- 雨のショッパネ(跳ね返り)で基礎が汚れる
- 南側に大きな窓を設置した。室内が暑すぎる。庇(ひさし)が欲しかった…
- 雨の日家の周囲を歩くときに濡れる
- ちょっとしたモノを置くスペースがない(庭用のシャベル・バイク・冬タイヤ・除雪用のスコップ)
- その他多数…。
意外に皆さん困っているんだね…。
僕が家を建てるなら、軒と犬走は必ずつけたい。
犬は飼わないけど‥。
犬走とは、基礎の周りをコンクリート等で固めた、幅90センチから1メートルの部分を言うんだ
。飼っていなくても、単なる呼び名だから気にしないで…。「軒の出」は様々なよい効果を建物と住む人に与えてくれるんだ(^^)
軒の出は、建物を守りと生活の質を高めてくれる
1.軒の出は雨が壁に直接当たるのを防ぐ
2.太陽の熱と光を調整してくれる
「軒の出」のその他の効果
軒のハード効果 | 軒のソフト効果 |
建物の外壁の劣化を防ぐ | 室内に雨が吹き込むことを防ぐ |
基礎部分のショッパネを防ぐ | 軒下のモノを雨から守る |
夏の日差しをカット | フローリング・家具の日焼けを防ぐ |
上部からの視線をカット | プライバシーの保護 |
室内へ温度が伝わりずらい | 室内の温度上昇の防止 |
家に風格・重厚感が出る | 風格のある佇まい(バズ邸感) |
こんなにたくさんのメリットがあるんだ。軒をつけない選択肢はないね。
そうだね。予算と状況が許せば軒をつけて建物を保護した方がいい。但し、水の流れる方向、落雪をどう処理するか、隣の建物と接近していないか等など、考慮しなければいけないことがたくさんあるんだ。ここでは、総論的なことで留めておく。詳しくは住宅の設計士さんとよく相談して決めよう!(^^)
はやり(流行)の屋根に要注意!
次に、今時の流行の屋根を「屋根形状(屋根伏せ)と軒」という点で見ていくと、必ずしも流行りに乗らない方が良いことがわかります。
片流れ屋根
片流れ屋根は、北側Aに雨漏れのリスクがあります。Bも同様ですが、南下がりの分雨漏れリスクは低いものの、台風や大雨・大風の際に、雨の巻き込み時に、室内へ侵入するリスクがあります。また、Cには雨が当たり、日も当たらないので、カビが生えて外観が汚れたり、痛みが進行するリスクがあります。
片流れ屋根 軒の出あり
軒の出がある分、南側は雨漏りのリスクは少ないですが、Aは逆勾配になり、壁との取り合い等で雨漏りリスクがあります。また、北側は外壁に水分が付着しても乾燥しないので、カビが生えるリスクが高まります。この屋根は、太陽光発電を屋根全体に載せる場合に使用する場合もあります。片流れ屋根+軒の出=太陽光発電パネルをMaxで載せることができます。
段違い屋根(差し掛け屋根)
差し掛け屋根は、太陽光発電を載せたい方や天井から光を取り込みたい方が用いる屋根です。AとB部分の雨仕舞部分から、雨漏れのリスクがあります。また、差し掛けの壁部分に窓を取る場合、そこから雨漏れのリスクがあります。
招き屋根
招き屋根は屋根のおさまりが良く切妻屋根の三角形の頂点をずらした屋根形状となります。屋根形状が自然なので、雨仕舞という点で理想的です。太陽光パネルを載せる場合には片流れ屋根より、若干枚数が少なくなりますが、雨仕舞という点で招き屋根をお勧めします。
陸屋根(ろくやね)
フラットの屋根を陸(ろく)屋根と呼びます。この屋根は、一部のハウスメーカー(セキスイハイム)で推奨されています。特に多雪地域では無落雪の目的が強調されているようです。
ところで、屋根には懐部分があることで、太陽熱や雨音を室内へ伝わりずらくする効果があります。懐が狭ければ、太陽光の熱、雨の音が伝わりやすくなります。メーカーよりこの屋根を提案された場合には、提案した目的をよく聞くことです。そして、もし予算が許す場合には切り妻屋根・寄棟屋根等に変更しましょう。
その他の複雑な形状の屋根
その他、屋根形状は多くの種類があります。
出典 goo国語辞典(113464.jpg (400×300) (goo.ne.jp))
たくさんの屋根形状を覚える必要は全くありません。大切なのは、屋根形状の原則例外パターン:原則:寄棟か切妻、例外はそれが許されない状況の時に他の屋根形状を採用。と覚えておいてください。
屋根形状の原則例外パターン
- 原則:寄棟か切妻
- 例外:それが許されないときに他の形状を採用
ちなみに、切妻屋根の際には妻側の軒の出も最低45㎝程度確保しよう。
妻側の軒の出は最低45㎝確保しよう。(理想は91㎝確保、家の壁側面の劣化防止)
「屋根伏の原則例外パターン」は一つの考え方です。屋根伏せ計画は以上を踏まえ、建築士とよく相談して「なぜその屋根形状を採用するのか。」その理由、メリットとリスクを勘案して進めてください。
家の建築費と同等に大切なのはライフサイクルコスト(LCC)
今回、屋根の重要性について解説をしました。屋根形状を適切に選ぶことで、家の劣化を防ぐことができます。また軒の出を確保することで、夏と冬で異なる太陽の熱量と光量をコントロールしてくれる効果などがあります。
屋根形状と軒の出は、ランニングコストとイニシャルコストに影響を及ぼします。まさにお財布と直結する問題なのです。
近年、建築の世界では近年、ライフサイクルコストの考え方が重要視されてきました。ライフサイクルコスト(LCC)とは、建物が計画・設計されてから建設、運用、維持管理、そして最終的な解体・廃棄までにかかる費用の総額のことです。
- イニシャルコスト:建設費用、設計費用、土地取得費用など、建物を建てるための初期費用。
- ランニングコスト:運用中にかかる費用で、水光熱費、保守費、修繕費、税金、保険料などが含まれます。
- 解体費用:建物の役割が終わった際の解体・廃棄にかかる費用
ライフサイクルコストを把握することは、建物の長期的な資産価値を維持し、コストを最適化するために非常に重要です。例えば、初期費用を抑えるために低品質な材料を使用すると、後々の修繕費が増大する可能性があります。そのため、長寿命で高耐久な材料を使用し、省エネルギー設計を取り入れることが推奨されます。
LCC:陸屋根と寄棟の比較例
住宅会社から当初提案された陸屋根を、寄棟屋根に変更した結果建築費が100万円上昇したとします。35年間で割ると、毎年約28000円上昇します。
しかしその分、壁の劣化を防ぎ、2階の室内の温度上昇を防ぐことができれば、光熱費を下げ、外壁塗装のサイクルを伸ばすことができます。その効果が1年で28000円、35年間の合計で100万円を超えるものなら、建築費の上昇分を十分にペイした(得をした)ことになります。
- 屋根を作るときにかかる部材費(小屋組み)が増えた分、建築費は上昇するが、日々の光熱費・修繕費は少なくなる。
- 生活の質がいろいろな場面で上がる。
- 雨音が響きずらくなる。(懐が大きくなる=空気層が大きくなるから熱・音が伝わりずらい)
建築費とLCCかぁ~
色々考えることが増えるなぁ~僕にできるかなぁ。なんだか頭が痛くなってきたよぉ~
ロンくん大丈夫だよ、実は自分でLCCを考えなくてもいいんだ!
住宅会社や設計士から提案を受ける時に、LCCを出してください。というだけでいいんだ。例えば、建築費及びLCC(35年間)の総額で家を決めたいので、提案してください。と伝えるだけで済むんだ!
へぇ~、よかった…。自分で考えたら、頭が切妻屋根みたいに、三角形になるところだったよ。
本当にそれだけ伝えればいいの?
ライフサイクルコストを出すためには、かなりのヒアリング等が必要だよ。もし、相手(業者)に自分の情報をあまり出したくない場合には、建築後35年間の長期修繕計画を出してもらうといい。長期の修繕費用がわかれば、建築費と長期修繕費の合計額を掴むことができるんだ。
具体的な35年間のキャッシュアウト(お財布から維持管理にどのぐらい出ていくのか)が見えるんだよ。
ライフサイクルコストは保険料やローンの金利、固定資産税を含めると、多岐にわたり、複雑になるのでここでは、建築費と長期修繕費のみを各社に出してもらい、比較しても充分かと思います。
例えば、外壁は15年に1回の塗り替え、エアコンは10年に1回程度の買い替え、給湯器は10~15年に1回の買い替え等…。これらの長期修繕費用を多めに見積りする会社と、少なく見積する会社、項目落ちしている会社など様々でしょう。数社出して検討することで、いろいろなことが見えてきます。
そくまで、建築会社に計画を出してもらえると有難いね。
あとは、自分でエクセルかスプレッドシートで、数字をまとめてみるよ。
そして、建築費と長期修繕費の総額で、一番安い会社を第一優先で検討するよ。
長期修繕計画は、人生のライフプランに似ています。「子供が生まれて6年後の入学でまとまった資金が必要」という将来予測は、生まれた段階で計画を立案できます。家も同様、建築年を1年目とし、当初35年間の修繕費用は予測がつきます。但し、あまりに長い、50年ともなれば、物価上昇やそもそも、この家に住んでいるかどうかわからないので、まずは30~35年程度の遠すぎない将来を見据えて、修繕計画を出してもらいましょう。
今回は屋根を中心とした解説なので、LCCの話はいずれ詳しく掲載する予定ですよ。好ご期待!!
今回のまとめ
今回は、屋根形状(屋根伏せ)は「原則例外パターン」を意識して選ぼう! その2 で次のことを解説しました。
この記事でわかること 3つ
- 軒の出が家の耐久性を増強させるポイント
- はやり(流行)の屋根に要注意
- 家の建築費より大切なのはライフサイクルコスト
結論は次の通りです。
- 軒の出は充分に確保しよう。(できれば91㎝くらい)
- はやり(流行)の屋根のデメリットを理解して選ぼう(招き屋根は可)
- 家の建築費だけではなく、建築費+ライフサイクルコスト=総額で考えよう。
今日の一言で結論。「原則:寄棟か切妻屋根を選び「軒の出」を確保しよう!)
読者の皆さん!
全2回の解説はいかがでしたか。その1では、最初に約1300年前の木造建築の屋根形状と長い軒の出の機能性について、また、日本を含むアジアのモンスーン地域で建築をする際には雨への備えが大切であることを。その2では「軒の出」を確保することで、建築物のハードとソフトの両面への影響、さらに生活の質まで高めることができる点を。いま流行の屋根形状にはいろいろなデメリットもあり、住宅会社より、寄棟・切妻屋根以外を提案されたときには、その理由を聞くことが重要で、納得した上で、他の形状を選び、軒の出幅を選びましょう。(自分なりに納得することが大事です。)最後に、35年間で、トータルいくらかかるのかを把握する考え方LCCについて解説しました。建築会社の中には、長期修繕計画を提出できない、慣れていない方もいると思います。(無理に提出していただく必要もないので)数社検討する中で、3社程度提出していただければ、おおよその35年間の長期修繕の全体像は見えるはずです。ここでは、正確な金額よりも、見積の項目落ちがないことの方が重要です。数字は大雑把で構いません。見積は多少違っていても対処ができますが、項目ごと無いのは予算を全く取っていない、ゼロということになります。対処が難しくなるのは自明です。
以上、家づくりの定石を知れば、業者からの提案が原則通りか・例外か、また、例外の際には何故例外の提案をしたのか、など、理由を聞いた上でジャッジ(判断)することができます。
これからも一緒に勉強して、賢い大人になるためいっしょに学んでいきましょう!
それでは、皆さーん、いってらっしゃい!
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