皆さん、こんにちは!ティカールです。この話をする前にまず、お読みいただきたい。1914年初版出版の小説「こころ」明治の文豪【夏目漱石】の有名な一節。
登場人物の「先生」はかつて、親の財産争いで苦労した経験から、次のように私に言いました。文脈がわかるように、少し前の文章から抜粋します。
「君の兄弟は何人でしたかね」と先生が聞いた。
先生はその上に私の家族の人数を聞いたり、親類の有無を尋ねたり、叔父や叔母の様子を問いなどした。そうして最後にこういった。
「みんな善い人ですか」(先生)
「別に悪い人間というほどのものもいないようです。大抵田舎者ですから」(私)
「田舎者はなぜ悪くないんですか」(先生)
私はこの追窮に苦しんだ。しかし先生は私に返事を考えさせる余裕さえ与えなかった。
「田舎者は都会のものより、かえって悪いくらいなものです。それから、君は今、君の親戚なぞの中に、これといって、悪い人間はいないようだといいましたね。しかし悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです」
僕は、夏目漱石が先生言わせたセリフに人の本質があると思っている。相続争いをするのは、平生は普通の人間。実は、皆いい人たちなんだ。
ところが、お金や財産・権力や男女関係が目の前に迫ると、豹変して理性の仮面を剥がし、感情むき出し人間となる。隠れていた欲望が暴れ出す。悪人に豹変してしまう。これが普通の人間。僕であり君だ!
人間はそんなに強くない。聖人君子でもなければ、娑婆世界の人間なんだ。つまり、豹変するのが普通であって、金や財産を目の前にして変わらないのは、世捨て人か、釈迦かイエスくらいなんだ。到底、普通の人ができることではない。
だから、自分も含めて豹変する前に、平時親が元気なうちに自分の必要な財産分は、しっかり頂くことが大事なんだ。
へぇ~、そうなんだぁ。
親にはエンディングノートに書いておいて!といっているよ~。その対策じゃだめなの?
わたしも、実家の両親には遺言書をつくるようと、それだけでは不十分なの?
ロンくん夫妻は流石だね。エンディングノートや遺言書をやらないよりずっといい。でも、相続税とか遺言とか、これも、残された子供達が揉めないための対策の一つだ。
でもこれで充分とは言えない。
もし遺言書の内容に兄弟が不満を持ったら、兄弟間で遺恨が残る。法的には相続問題は解決した体(てい)だけどね。
円満解決とは言えない。
「こころ」で先生に漱石が言わせたセリフは、実際の感情面のことなんだ。
※小説「こころ」はやさしい口語体で書かれている、場面ごとに短く区切られているから、中学生ぐらいでも読める小説なんだ。以下にリンクを貼っておきます。
この記事でわかること
- 遠慮は良くない。もらいたいなら貰う。嫌なら相手が断るから遠慮するな!
- 公正証書遺言や相続税対策ですべて解決できると思うのは、幻想。
- 親が生きているうちに、自分のモノをもらっておこう!
- 他の兄弟のことを考えて、節度を以てもらおう!
家づくりが初めて、マンションを検討、賃貸アパート、設計中の人にも、将来役立つよう、分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
遠慮は良くない、もらいたいなら貰う。嫌なら相手が断るから…遠慮はするな!
最初に僕の体験を話します。失敗談です。
祖父が生前、インゴット(金の延べ板)を持っていた。といっても、100gぐらいのもので、スマホを胴体から半分ぐらいに割った程度の延べ板だった。
聞くと借金のかたに取ったもので、借金をした人は案の定、返済できなかった。一応、金を貸す時に金目のものとして差し入れたものだった。祖父の話ではソビエト崩壊の前なので、おそらく14~15万円程度が当時の金額。1gあたり1500円前後でしょう。今(令和6年12月26日なら、1gあたり14000円)
それが金庫にあったのだけれども、亡くなる10年ほど前、僕が社会人1年目の時、祖父の部屋に行ったら、これを孫にあげるかなぁ?と言った。
延べ板は初めて見るものだったから、僕は触って「すごい!」と言ったけど、本当にくれるかどうかわからないし、そもそも、僕が本当にもらっていいものか?祖父の老後の貯えとか、祖父の生活状況がよくわからないので、遠慮したんだ。
次の機会にいろいろ、話そうと先延ばしした。
しかし、亡くなった後に祖父は、かなり年金をもらっていたこともわかったし、いろいろな人に資金援助していたことも亡くなった後知った。それも数千万円単位だった。
僕はあの時もらっていても、祖父としてみれば、特にお金に困っていなかったし、孫に何かを残したいと思ったのかもしれない。借金のかた、だから、そもそも祖父は目利きができる人だったので、あげると思って貸していた。相手が返済できないと知っていたと思う。
延べ板にも特に未練も、執着もなかった。
借金のかた、だから金庫にしまったままで、ほったらかしだった。そういう性格の人だった。
ああぁ~、惜しいと思った。後悔しても後の祭り。
亡くなった後、相続財産の目録にはのってこなかったと母が言っていた。おそらく、同居の長男が金庫を開けて先に見つけたのでそのまま自分のモノにしたのかもしれない。(これは推測だけど)
つまり、遠慮せずもらっておけばよかった。100gの金の延べ板。
「公正証書遺言や相続税対策ですべて解決できる」と思うのは、幻想。
公正証書で遺言書をつくるのは、偽造防止と裁判所での証拠能力を高めるため、主にこれが目的といえる。従って、亡くなった後、相続人同士で揉めないかどうかはわからない。
揉める時は揉める。これは致し方ないことなんだ。揉めない唯一の方法・・・それは相続を放棄することだ。日頃から親の死に金を当てにするような人生を考えないで、自分の道は自分で切り開くを旨として生きていこう!というのが大事だ。
しかし、兄弟間で(兄弟が3人いれば)、それぞれ経済的な差はどうしてもつく。また、兄弟間はよくても、その相方(夫婦)が口を出す。相方は他人だから、少しどこかで聞きかじった、相続の知識を入れ知恵する。
そして揉める。
つまり、揉める時は揉める。ただそれだけ、自分がいつでも、一切要りません!と言える生き方をするしかない。揉めるくらいなら、全部くれてやる!と言えるような生き方をしたいもの。
よって、書類を整えても、相続税対策をしても、何をしてもそれは気休めであって、親の死後に相続争いをしないように道を開通させておくことにはならないんだ。
親が生きているうちに、自分のモノをもらっておこう!
親が自分のモノを特定の子供に上げる時、
これは、子供の想像を超えている。推し量れない。当時大学出たての自分には想像できなかったが、今、ティカールは48歳になり子供が3人育てており、なんとなくわかるような気がする。
自分がどの子供に、どの孫に何をあげるか、100%自分の意志で決められるし、また、使いこなせないほどの財産をあげることはしない、ということも知っている。
大学生の長女に5万円をあげても大丈夫だが、中学1年生に同じお金をあげるのは、ちょっとやり過ぎではないかと、分別が付く程度の常識を、僕自身が持っているつもりだ。
あの時の祖父は大学出たての社会人の自分なら、インゴット100gをあげてもいいだろう!と、昔から思っていたことを、やっと実行したに違いない。
だから、自分の判断もさることながら、相手があげたいのなら、気が変わらぬうちにもらっておくべきだし、もし自分が親や祖父母の何かをもらいたい、引き継ぎたいと思うなら、元気なうちにもらう(ひきつぐ)べきだと思う。
死んだあとは、冷徹などこかの法学者が決めた「法定相続」なるもので機械的にきまるだけなのだから。
他の兄弟のことを考えて、節度を以てもらおう!
もちろん、「欲しいものをもらおう!」を実行するからといって、
親の財産を全部もらうとか、他の相続人のことを考えないで、欲張りになることとは違う。そこには、大人の良識(クッドセンス)と見識が必要だ。また節度や慎みが必要なことは言うまでもない。あくまで、親の死に金を当てにしない生き方をするのをベースに人生を生きていく。ここを外してはいけない。
中には、兄弟が障害を抱えて、弱い立場を守ろうとする親もいる。だから、健常者の兄弟は不平等を感じる訳だが…ここでも親の死に金を当てにせず、「いいもん!欲しいものなら自分で買うから…。」という態度が原則だし、中には借金まみれで死んでいく親もいるのだから、分ける財産があるだけ幸せな悩みだという考え方もできる。
本来、何も持たずに生まれてきたのだから、この世に生を得られただけでも、大変な財産を受け取ったようなもの。なにも貰えなくても、不平はないはずだ。
また、税金などの処理もチャンと税務署や税理士と相談して、引っかからないようにしておくことが大事だ。
結論は、欲しいなら「欲しい!」と正直に言う。でも他の兄弟のことも考えて言う。これが大事。そして、親の死に金を当てにした生き方は、カッコ悪い!遺言書を開けたら、知らない婚外子と愛人の名前が出てきて、こいつらに全部あげる!と親父が言っても、兄弟でワハハ!と高笑いできるような人生をお互い歩めればいい。そもそも、期待がなければ失望もない。
まとめ
今日は、財産は親が元気なうちにもらおう!について解説しました。相続争いをするのは、普通の人が豹変するためです。「お金・地位・男や女・権力」これすべて、人間にとって一番の弱点です。
鍛えられていない普通の人なら、コロッと悪魔の囁きを聞いてしまう。これが人間のスタンダードと思います。
その上で、
- 貰いたいなら、親が元気なうちに貰いたい!と言おう。
- 公正証書や税対策は法的対策であって、感情の解決とは別だと知ろう。
- 親は実は誰に何をあげたいか考えている、ことを知ろう。
- 自分がもらう資格があるかどうか、自分では判断できないものである。良く見ている親(祖父母)だから判断できることを知ろう。もらうのは、最後の親孝行でもある。
- 他の兄弟のことを考えて、節度を以てもらおう。
以上、参考にされてください。また、御意見、賛成・反対・なんでもお待ちしています。
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